本当の「悪」とは何か?

ふつう人を殺すことは「悪」です。でも極悪人の死刑など、悪人を殺すことは必ずしも「悪」とはされません。また戦争での人殺しなら、殺す敵が善人であっても、「悪」とは見なされず、逆に称賛すらされます。こうみると「善」と「悪」の区別は、主観的であいまいなものとも思えてきます。でもここで、一つの共同体があり、その秩序を乱す行為は「悪」、守る行為は「善」と定義してみてはどうでしょうか。例えば、人殺しや略奪をいくら行なっても、国をまとめたり、国力を強くしたりして、共同体の結束を高める行為を行なったならば「善」とされ、英雄とも見なされるわけです。またそれとは別に、道徳的・倫理的には殺人や盗みは、はっきり「悪」と定義されている。ということで、「善」と「悪」の概念は、共同体という立場からみた場合と、道徳的な意味合いとで、解釈にズレが生じる場合があるという意見です。